ルイス島を歩く

Photo 典型的なルイス島の風景

では街を離れて,本格的に島に繰り出しましょう。まずは目的地に到達するための交通事情から。

交通

バス

Photo 島のあちこちにあるバス停。

かなり島内くまなくバスが走ってます[路線一覧&時刻表]。

ただし,本数は少ない(朝,昼,夕,晩に1本ずつが基本)。というのもほとんどの路線は,観光客用というより,メインはスクールバスとしての運用だから。唯一,W5線は空港から1日で観光地をめぐりつくせるように組まれています。

運転

Photo ものすごい大音量で青を知らせる歩行者信号のボタン

交通規則はイギリスのそれ。市街地の交差点はぐるぐる回るラウンドアバウト(とにかく右から来る車が優先)が基本で,信号は歩行者用を除いてほとんどない。速度制限は,市街地や民家の多い地区は30~40mile,学校周辺で子供がいる時は10〜20mile,それ以外は現実的に無制限(本当は70mileだけど,地元民はめっちゃくっちゃ飛ばしている)。

車は,地元民半分,観光客(含,キャンピングトレーラー)半分といった印象(冬以外は)です。クロスバイク風の自転車(家族やカップル)も結構います。みんなすごく軽いギアで走っていて,さすがサイクリング発祥国,ママチャリをおかしな姿勢でガンガン踏み込むのがデフォルトの日本とは違って,サイクリング慣れしてますね。

Photo Passing Place

1車線区間が多いが,行き違いのできる「Passing Place」が数十メートルおきにある(四角い標識が次々に現れる)し,要所要所先の見えないところなど,ここは広いほうがいいな,というところはきっちりことごとく広くなっているので,対向車もぜんぜん苦になりません。対向待ちのドライバーには,手を上げたり,ハンドルの上にのせた手の人差し指を上げたり,で挨拶します。お先にどうぞはハイビームの1回パッシングか,ウィンカーを出しながらの停車です。また,赤い郵便局の車など業務の車はやたらとPassing Placeに入って譲りまくります。右側だろうが左側だろうが自分が入って譲りまくります。


Photo 道をあけてくださーい!

道路は運転しやすい設計の上に,舗装がとても良くて,非常に走りやすいんですが,注意すべきは,対向車や人より,羊や牛。わざわざ道に出てくるので,ブラインドコーナー/サミットの先には牛が羊がいる「かもしれない」運転をこころがけましょう。


Photo Cattle Grid

ときに,「Catle Grid」なる標識があって,走ると「デデデデ」と鳴る小橋のようなところがありますが,これは地面がスノコ状になっていて,家畜が主人の領地から出ないようにする仕掛けです。

なぜかこの周囲はどこも牛や羊の糞尿まみれです。家畜たちの怨念です。

給油

Photo コミュニティ・ショップ

給油は,街に必ず一つある「コミュニティ・ショップ」とか称するガソリンスタンド兼コンビニ兼郵便局で,セルフで給油します。給油したらレジに行って支払います。夜中は店の2重入口の1重目の中にある自動支払機で支払います(入れ逃げしてもカメラに撮られてるので,島を出るときに確実にタイホされます)。このガソスタ店舗は,どこも必要なものがひと通り揃っていて,なかなか便利。酒もあります。お酒はレジでほしいものを言うと出してくれます。


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島のガスは高い

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街のほうがちょっと安い

島でのガスの値段は,ガソリンも軽油もほぼ同じですが,いずれもリッター230円くらいと,高いです(街から離れるほどさらに高くなります)。軽油のほうがガソリンよりちょっと高いんですが,品質も日本の軽油とはかなり違うようで,その排気ガスも全く臭くありません。燃費のよいディーゼル車のほうがシェアが高いため,需給からも軽油のほうが高くなっているそうです。

ちなみに私の場合,これまでの平均燃費は,ヴォクスホール・コルサ(Vauxhall Corsa)5ドア(ガソリン車)だと47mile/gal(17km/リットル),フォード・フォーカス(Ford Focus)5ドア(ディーゼル車)だと4.9L/100km(20km/リットル)(いずれも1000kmちょっと乗ってのドライブメーターで)でした。島内は市内以外には信号も交差点も無いので,燃費は良くなる傾向です。

トレイル,ウォーキング

Photo Great Bernera

ま,しかし,やはりなんといっても,ルイス島は各地を歩いてこそ魅惑してきます。

ただ広い空といろんな海があり,牧草地があり,ヘザーとピートの丘があり,なだらかな800m未満の山があり,Loch(沼・湖・入江)があり,岩がある。羊がいて,牛がいて,ときに人がいて,キャンピングカーがあちこちに停まってる。ハナアブが飛び,蝶が舞い,ガチョウが群れをなして飛び,ときに顔を小さい虫(midge)が刺してくる。

見渡す限りそんなところ。

ちなみに,人が住む前は,森の島だったらしいです。ピートを掘り尽くすと底から木の根っことかが出てくるんだと。

柵を越えろ

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Gate

歩くといっても,トレイルコースのほとんどは,道路じゃなくて丘や草っ原です。そこで少し歩を進めればすぐ登場するのが,柵。羊がどこかにいってしまわないようにするための柵です。羊は誰のかがわかるよう,カラースプレーで持ち主ごとに特徴的に全頭色付けされてます(関連動画:Youtube)。

人間もこの柵を越えないかぎり,同じところをグルグル回るだけなので,なんとかして越えねばなりません。でも,大丈夫,ちゃんと人が通れるように門(gate)が設けてあります。このうち,どのゲートを勝手に開けていいのかどうかが問題ですが,たいていの景色の良い小道(というか,ただ草が若干ほかより踏まれている気がする程度のところ)は,トレイル・コースとしてちゃんと整備されているので,各種トレイルガイドを熟読すると,超えていいゲートはどれかがわかります。というか,実際,民家の囲いでもない限り,越えたって誰も文句は言わないだろうので,適当に越えちゃえばいいみたいな雰囲気。


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もっとも,「整備されている」といっても,写真のような棒がところどころに立っているだけですが,なかなか機能的な仕組みで,その棒を目指して次々歩くだけで迷うことはありません。

いわゆる英国式庭園をゆうに超える美しさ

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ヒースの丘

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ヒースのお花

ルイス島を歩き進む度にため息が出ることでしょう。咲き誇る花々の可憐な姿に。特に,放牧もあまりされてなく,人もこないようなところ(いくらでもある)は,天国を絵に書いたような感じさえ受けますよ。

心奪われる美しさとはこのことよ。

ところで,この島は未だに小作牧畜業が基本で,かなりの広さの土地を島に数人程度の領主様がもっていて,住民は地代を払って牧畜しているそうです(といっても,柵で囲われただだっ広い放牧地の地代は,羊の頭数に関係なく,いまだにランチ代程度/年とのこと。領主様も質素な暮らしだそうです)。それを思うと,この島全体が,領主様の大きなお庭のようなもので,これぞまさに真の「英国式庭園」と言えるでしょう。


悲しい過去の産物

が,その土地の領有をめぐっては,悲喜こもごもいろいろお話がある模様。19世紀半ばまで一人が島全体を領有してて,最後の領主がいなくなるとき,土地は地元の名士らに分配されたのですが,さらにその土地は小作農に分け貸さねばなりません。しかし,みんながみんな土地を与えられたわけではなく,お前は次男だから出てけ,農家はいらん牧畜業だけでいい,とかで,カナダを中心に結構な人が移民に出るしかなかったと。

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名残

この一連は,いわゆる「クリアランス運動」[参考:Wikipedia: Highland_Clearances]として見ればよいのでしょう。人間を追い出し,羊を入れる。柵のうち石垣でできた城壁のような立派なものは,おそらくそれ以前のクロフトの区域を示すもので,石作りの家の土台はクリアランスされる前の住居跡のようです。島にはいくつもの廃村がありますが,これらの多くはクリアランス運動の結果でもあると。つまり一見,羊がいっぱいいて,牧歌的できれいですね,というこの島(というかスコットランドの田舎)の景色のほとんどは,特に19世紀のクリアランス運動によって造られた景色なんです,ってことですね。

ちなみにこの島の歴代の領主様(クラン[Clan]:クラン・チーフを中心とした小国家的土地貸借共同体。氏族。ルイス&ハリスは,MacLeodさん。)は,あれこれプランがある人たちで,本土が飢饉の時に何千人もをこの島に移住させたり,新しい水産業を島に興して労働者をたくさん連れてきたり,と良かれと思ってあれこれやらかしてるんで,いったんやることがなくなると,出てくしかない人が結構でちゃったんでしょうね。なのに,戦争が始まると次々兵隊さんにとられて,島の男手が極端に不足したり*,とまぁあんまり明るい過去ではないですね,田舎ってのはどこも。

現在のCroftingは,約24000平米くらいが割り当てられてて,放牧がメイン。補助金も出ますが,これだけでは生活できないので,水産関係業などとの兼業農家が大半だそうです。

ビーチ

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Bosta Beach

ビーチはどこも恐ろしいくらい美しい。特に大西洋側のUigとかBostaとかは,「スコットランドのバハマ」とよくパンフレット類に書かれているくらい。


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泥炭と砂のコントラスト@北トルスタ

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河口はピートで真っ赤

美しさのヒミツは,スコットランド随一を誇る砂浜の砂の貝殻成分率で,約90%を誇ります。

お金持ちならこんなステキな浜辺のコテージ(例:Beach Bay Cottage)で,眺めを堪能しちゃったりできます。


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元気な子ならかろうじて泳げる?

夏は泳ぎたくもなりますが,海水もそれほど高くなく,なにより気温が20度未満なのでお勧めはしません。むしろ,イルカや鯨を見に行くオーシャンツアー(例えばこのseatrekはものすごい宣伝してる)や,釣り(そこらじゅうで,おっちゃんや親子が釣りしてる)のほうが人気があるようです。

Photo これは危険。左上の芝生は突如終わって断崖絶壁へ。打ち付ける波も荒々しい。

ルイス島の北端やハリス島の南端は,切り立った崖の景色がなかなか雄大です。Lewisian complexとして知られる片麻岩から成るそうで,30億年前に形成されたものらしいです。

しかし自然を舐めてはいけない。あちこちの崖に「ここで誰それが十何歳で不幸にも落ちて死にました」みたいな石版があります。そこには常に断崖絶壁があることを予測すべし。


Photo 看板の先に向かって道ができているのは・・・?

だからといって,そこに巨大な柵を儲けるような無粋なことは決してしません。意味ありげな杭が打ってあったり,「キケン」の看板がさりげなく立っていたりします。

地図やガイドブック,そして現場の様子をしっかり確認して歩きましょう。

登山

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登山もできますが,ルイス島の山は裾野が広くて,登るまでに時間がかかるので,ハリス島の山のほうが人気があります。

長い一日

Photo 夕陽が本当に美しい。

トレイル中に日が完全に沈んでしまったら身動きは不可能です。この島は本当に真っ暗です。

ただ,日は長いので,遅くまで動くことは可能です。でも日が沈んだらマジ終わりです。早めに安全なところに帰りましょう。そして星の時間を楽しみましょう。プラネタリウムはこの島にいりません。満天の星空があなたを包みます。

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